今週のドリーム

第四時代 夕ぐれまでに(前編)

 ゴーレムのまいごは奇跡だった

当然のことながら、ゲームを作るには人がいる。
1人でゲームを作ることもできるのは分かるし、初期の頃はそういうゲームもあったらしい。
でも、やりたいことがドーンとあって、発売したい時期があって。
そう考えていくと、最初から妥協の連続しか待っていない気がするのだ。
1人でやるには、あまりに僕は浅い。
妥協は、マスターアップの直前だけにしたい。そうたしかに思った。
僕は、プログラミングの知識と経験があって、CGも音も少しずつかじっていて、印刷物に関する知識も少しあり、Mac とWindows の両方が使え、ネットワークの…。
さて問題は、全部が中途半端だということだ。
どれかがずば抜けて得意というわけでもなく、浅く広い。
こう考えていくと、自分にないものを持っている人を呼んでいっしょにゲームを作るしかないことが分かる。
それぞれが担当の分野について技術を高め、職人と化し、それらを融合していくことでゲームは完成に至ると僕は考えた。
そしてさらなる問題は僕のコミュニケーション能力の限界だ。
僕は、考えていることをうまく人に伝えようとすると、めちゃくちゃなパワーを必要とする。
もちろん時間をかければ伝えられるのは分かっている。
僕の人生の浅いところはまさにここにあり、人を笑わせるネタをもっていくのは容易であっても、真面目になにかを伝える能力に関しては疑問だらけだ。
そうなると、僕の考え方の傾向を知っていて、勘付いてくれる人がありがたい。
5くらい言えば10まで察してくれるような人がスタッフとして理想だ。
最初はこの点を重視して、そういうメンバーではじめた。

が、しかし、次に問題になったのは「ノリ」だ。
ノリがいいのは、勘がいいのとは違う。
僕のテンションが低いときに、それを上げてくれるノリ。
僕がノッているときに、同じ方向でノッてきてくれる人。
つまりいつでもノリノリで作業をすすめれる人でなければならない。
ノリノリでなければ、やっててわくわくするゲームは作れないと信じる。
僕のプロジェクトには、計画性とか進捗報告とかがほとんどない。
変わりに、毎日の勢いとノリを互いに確認している。それもなんとなく。
やばいぜ、あと1週間でなんとかしよう、という感じで。

そういう訳で、最初のメンバーは失敗に終わった。
会社という形態に甘えてしまった感じが僕の中に残っている。
仕事をすることの代償として人はお金を受け取る。
そこがポイントなのだ。
気をつけなければ、なんとなく日常は過ぎゆき、危機感のない時間の浪費が続くのだ。
リスキーでなければ作業は進まない。
お金で作られた関係は続くはずもないのだ。
この点に関して、明らかに僕は自分を見失っていた。
それに気付いたときは、すでに手遅れに近い状態だった。
まさに会社はこのとき、半死状態にあったのだ。
会社としては機能していたが、ゲームの制作はまったく進んでいなかった。
ゲームは完成しないのではないのか。
夕暮れが来る前に夜が訪れてしまうのか。
不安が毎晩、頭をよぎった。

つづく

 

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